MBAの価値を考える(1)学びの深化

MBA課程を修了した今となっては、MBAって何だろうと自問することが多い。プログラム中は授業の予習復習や課題、グループワークなどで多忙を極め、ゆっくり「MBAの価値とは?」という問いに答えることが出来なかったが、プログラムを離れた身としては、より客観的かつ主観的な評価を下すことができる様になった。

  

こうしたMBAの本質を問う質問をMBAホルダーに投げかけた際に、期待される回答が「学びの深化」や「人脈形成」、そして「キャリアの進展」であろう。日本人的には「語学力の醸成」も挙がるかもしれない。しかしながら、上記の価値については個人的には同意できない部分も実はある。本連載では、自分自身が考えるMBAの価値について語っていきたい。

    

まず初めに、「学びの深化」について考えてみたい。志願者にとってはがっかりさせるかもしれないが、MBAでのアカデミックレベルは正直言って大したこと無い。「広く、浅く」と表現するのが正しいだろう。多岐に渡る知識を得ることが出来る一方で、個別の専門領域の深さはそれほどでもない。

  

それもそのはずで、ビジネススクールは「専門知識」の深化を目指す場ではなく、キャリアの発展性を多方面に伸長させる場であるため、そもそもの出発地点として、個々の学生に高いレベルでの前提知識を求めていない。なので、統計学の授業は平均や標準偏差から始まるし、会計の授業はP/LやBSの基礎知識から始められる。こうした状況は統計や会計などの所謂コア科目だけでではなく、専門科目であるエレクティブ科目でも同様だ。ヘッジファンドの授業であれば、2/20といったフィーストラクチャーから入り、債券投資の授業であれば、債券の仕組みから入る。

  

そして、到達点についても深度は非常に浅い。プロとして最低限求められるレベルが10とすると、イメージ4-5合目地点で授業は終了する。基本的な解説書を一冊読み終わった時点での知識レベルに近しいのではなかろうか。

  

自分自身の体験を書くと、MBA課程に入学するまでに7年の投資経験があったのだが、新たな学びを得るためにファイナンスの中でもとりわけ投資に焦点を当てたエレクティブを多く取った。しかし期待とは裏腹に、自らの専門領域における新たな学びの機会はそれほど多くなかった。忘れていた知識の掘り起こしや、専門領域の周辺部における知識を得ることはできたが、キャリアを大きく発展させることができるほどの学びは得られなかったのが実情だ。

  

良くある誤解に、「MBA課程を卒業できればどの業界にも転職できる」というものがあるが、「MBA課程だけ」では正直難しいというのが個人的な見解だ。上述の通り、授業で得られる知識レベルは高くないため、プロフェッショナルな世界で求められる知識水準にまで自己を高めるためには、自助努力が当然ながら必要になる。インターンシップであったり、クラブ活動であったりもするが、いずれにせよ相当な目的意識と行動力が無いと、知識レベルの向上は難しい。

  

こうした実体験を振り返ってみて、学びを得るためだけにMBAプログラムに入学することは、自分にとっての価値ではない、と気付かされた。

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KOLBE TAKUMI

大学卒業後は日系保険会社に就職し、外国債券・為替運用領域においてアナリストやトレーダーを経験。その後、ニューヨークのアセットマネジメント会社にて、米国債券のアナリストやファンドマネージャーを経験した。主な専門領域は、米国経済、米国債、米国商業用不動産担保証券(CMBS)。2019年2月MBA Storiesを立ち上げ。慶應義塾大学 環境情報学部卒、コロンビア・ビジネス・スクール MBA。

KOLBE TAKUMI

大学卒業後は日系保険会社に就職し、外国債券・為替運用領域においてアナリストやトレーダーを経験。その後、ニューヨークのアセットマネジメント会社にて、米国債券のアナリストやファンドマネージャーを経験した。主な専門領域は、米国経済、米国債、米国商業用不動産担保証券(CMBS)。2019年2月MBA Storiesを立ち上げ。慶應義塾大学 環境情報学部卒、コロンビア・ビジネス・スクール MBA。